ちょうどその時(22:30頃)、10メートルくらい先の通路を、一人の人が歩いて通り過ぎようとしているのが見えた。
「あっ、院長先生だ。」 私はとっさに院長先生にかけより、「院長先生、私です。
エホバの証人で会見をお願いした。」 「ああ、ああ」
と覚えてくださっていた。
「実は、私の家内が交通事故に遭って、ここに来たのですが。輸血ができないので、
大学病院に受け入れてもらえるよう、当直の先生も掛け合ってくださっているのですが、
難しいようです。先生!どうか助けてください。」
院長の迫田先生は、赤ひげ先生と患者から慕われ、ご自分が手術を担当された患者を夜間も見舞われる熱心な先生との評判だった。この日も夜遅く見舞っておられたのでおられたのであろうと思った。
迫田院長も鹿児島大学医学部附属病院に電話してくださったが、埒が明かないようで困り果てておられた。私としては、南九州で肝胆膵の名医と謳われるこの先生に、ぜひ治療をしていただきとの思いで、「先生!何とかお願いいたします。」と頼み込んだ。
医療委員と一緒に、術中血液回収装置*の話をしてから、先生が大分、前向きになられたという気がした。後で聞いたことだが、麻酔科の部長先生とも「できますか?」「できます。」とのやり取りがあったようである。
*術中血液回収装置:外科手術の大量出血時などの時に、その出血した自己血液を、専用回路を使用して、血液を洗浄して、赤血球を回収する装置である。」