お腹が血の海と聞いて、妻の容態が深刻な事態であることが容易に理解できた。
「話し声がきつい」「もう動きたくない。」と言っていた妻の発言が頭をよぎった。
とにかく、妻の信仰を代弁しなければと、そちらの方へ、今は全力を尽くさねば
と思った。医師に無輸血手術をお願いしたものの、「輸血が無理ならば、当院では
治療は無理です。鹿大病院(鹿児島大学医学部附属病院)に転送しましょう
連絡を取ってみますから。」と言われた。
この病院の院長先生も以前、会見に応じてくださっていた。私の高校(甲南)の先輩
であり、先生が「姉さん」と慕っていた方が、エホバの証人になったとも言っておられた。
先生の実家は、私の家から車で5分の皆与志町にあった。
お名前は、迫田晃郎先生で、鹿児島大学の医学部の助教授から、医師会病院の院長に
迎えられたのだった。会見の最中「待機手術は無輸血でも大丈夫だが、緊急手術は無理
と述べておられたので、この病院のスタンスは、あの会見の時と同じだと思った。
そうこうしているうちに、医療委員の二人の兄弟も到着した。
医師(後から分かったことであるが、当直医は産婦人科医だった。)が大学病院に電話するも、宿直が応対に出て「今日は無理です。明日来てください。」とのこと。
このような急患ですでに出血多量の場合、明日はないのにと思うと、やり場のない失望感に襲われた。この絶望的な状況では、私としては祈るしかなかった。
医療機関連絡委員の兄弟たちも、鹿児島大学医学部付属病院に搬送ができないか、何度も
電話をかけてくださっていた。